「逃げ馬」とは、レースのスタートから先頭を走り続ける馬で、競馬新聞の馬の脚質欄には「逃げ」と記しています。

前走の通過順位の欄では「1−1−1」とあって、これが「1−1−1−1」と4つ続いていたらその馬は見事に逃げ勝ったということになります。

逃げ馬になる理由には諸説ありますが、主に馬の性格、気質に由来するとされています。

そのためか逃げ馬は個性的な馬が多く、ファンが少なくありません。

また一頭の馬が逃げきるか、さもなくば後続馬につかまるかというレースには独特の魅力があります。

逃げ馬は強いのか

サイレンススズカという逃げ馬がいました。出走した全15レースでGIレース含めて9勝、2着1回、つまり10連対、連対率66,7%という成績を残しました。

これは逃げ馬としては驚異的な数字です。JRAの2019年のデータによると逃げ馬の勝率は18.2%。連対率は30.4%です。

つまり70%以上はゴール板の前で後続の2頭以上の馬に追い越されてしまい、勝つのは5頭に1頭もいないということです。

逃げ馬は一旦先頭を譲るや、とたんに脚色がおとろえて馬群に後退するというパターンが多いのです。

サイレンススズカも連対を逃したレースはすべて着外、6着以下でした。

では逃げ馬は馬券の対象として選択できるのでしょうか。

勝率18%。連対率30%というと、単勝で逃げ馬だけを買い続けても決してプラスにはなりません。

馬連の軸としても物足りません。そこでどういう逃げ馬がどういうレースで勝ち、連対するのかを見極める必要があります。

逃げ馬が強いコースとは

まず考えられるのはコースです。逃げ馬が強い競馬場の代表は函館競馬場です。

勝率は約26%、連対率が約37%となり、これは全競馬場の中で群を抜いた数字です。

これに続くのが小倉競馬場ですが、この2つの競馬場には共通した特徴があります。

まずゴール前の直線距離の短さです。

函館競馬場は4コーナーを回ったあとのゴールまでの直線距離は262mと中央競馬の全競馬場でもっとも短く、小倉競馬場は293mとなっています。さらにこのふたつ競馬場は急坂がなく、ほとんど平坦なコースだということも共通しています。

逆に逃げ馬の勝率、連対率がもっとも低いコースが東京競馬場です。

東京競馬場の直線距離は全競馬場で最も⻑く525.9mもあり、高低差2mの急坂があります。

このほかの5つ競馬場では逃げ馬の成績にさほどの差はありませんが、直線距離が短い、平坦であるということが一般的に逃げ馬に有利だという傾向は見られます。

また芝とダートでは逃げ馬の結果にさほどの差はありません。馬場状態でいうと重馬場は「逃げ馬、先行馬が有利」と言われていますが、データの上からは、逃げ馬に関してはそのような現象は明確には見ることはできません。

逃げ馬の勝ち負けは展開次第

次に要素となるのがレースの展開です。逃げ馬の出走が1頭の場合、レース展開は「単騎逃げ」となってレースは逃げ馬のペース次第ということになります。

この場合、後方の馬は逃げ馬にペースを合わせなければならず、その間に足を使ってしまい、ゴール前で逃げ馬を捉える足を使い果たしてしまっているということがあります。

単騎逃げの場合、逃げ馬が足を「溜める」というケースがあります。

単調に逃げるのではなく、後続馬が近づいてきたところで、ペースを落とします。

後続馬がいよいよ迫ってきたところで「二の足」を使ってもう一度ペースを上げますます。すると後続馬はペース

を乱されて足を消耗しただけになり、逃げ馬を追い抜くことができないということになります。

逃げ馬が2頭以上の予想はどうなる?

逃げ馬が2頭以上出走した場合はどうでしょうか。2頭がスタートで「ハナ(先頭)を主張」して競い、そこで足を使ってしまって共倒れに終わることもままあります。

しかし逃げ馬は必ず先頭に立たなければならないわけではありません。

2頭以上の場合それぞれの「枠順」と「テンのスピード」の差が問題となります。枠順はラチに近い内枠が、ラチ沿いを逃げるのが原則の逃げ馬にとっては有利になります。

テンのスピードは馬によって差がありますが、スタートから数秒で逃げ馬の順位は決まりポジションが落ち着きます。この場合、2頭の順位はあまり関係がありません。

『逃げ馬は人気薄から狙え』という競馬の格言があります。

人気の逃げ馬は後続馬に終始マークされるのに対して人気薄の逃げ馬はノーマークで走ることができ、マイペースのままストレス無く逃げることができるからです。

騎手によって成績の差はあるのか

逃げ馬の場合、よく話題にされるのが騎手です。そこで2019年の、逃げ馬に乗ったレースの騎手ごとの勝率、連対率のデータに見てみましょう。

勝率
1位C,ルメール41,5%
2位川田将雅40,0%
3位岩田望来36.8%
4位武豊36,6%
5位M,デムーロ31.6%

連対率

1位C,ルメール67,6%
2位川田将雅66,7%
3位三浦皇成50,0%
4位武豊46,3%
5位M,デムーロ44,7%

次に脚質を限定しない2020年の勝率、連対率を見てみましょう。

勝率
1位川田将雅8,2%
2位C,ルメール26,4%
3位福永祐一19,3%
4位武豊17,3%
5位松山弘平13,9%

連対率
1位川田将雅46,9%
2位C,ルメール43,8%
3位武豊33,0%
4位福永祐一32,3%5位藤岡佑介24,6%

これから逃げ馬と騎手の関係でどんなことが考えられるでしょうか。その結論は、言われるほどの関係はないということです。

ある騎手が逃げ馬に乗った成績と、すべてのレースの成績の順位はおおむね共通しています。

ふたつのデータに表れている差異は逃げ馬に騎乗した回数の差、コース、枠順の有利不利などからくるものと考えられ、成績全体を見ると意味をなすほどのものではないと判断するのが妥当だと考えられます。

そもそも有力馬には好成績の騎手が当てられます。

結局、逃げ馬と騎手の関係は、競馬の格言『馬七人三』通り。

逃げ馬もまた勝ち負けは馬の能力と調子が70%、騎手の腕が関与するのは30%程度ということになるようです。